重要な「宿題」が残されたまま、数の多数で衆議院を通過――憲法改定の是非を問うための手続きを定める「国民投票法」の改定案が6月19日の衆院本会議で、与党や中道改革連合などの賛成多数で可決した。共産党は反対した。参議院では6月24日、憲法審査会で審議入りした。
内容は、投開票の立会人の要件緩和など規定を公職選挙法にそろえる形式的なもの。6月5日に自民、日本維新、国民民主、参政の4党が共同提出した。
前回、2021年の改定は、①商業施設や駅などで投票できるよう投票環境を改善、②航海実習中の学生なども投票できるよう洋上投票の拡大などが行われたが、付則で「宿題」が残された。
付則は、賛成や反対を呼びかける運動に関する政党コマーシャル(CM)やネット広告、運動資金の規制などについて「3年をめどに必要な措置を講じる」としたが、今回も手つかず。公正で公平な投票環境を整えるより重要な点が、「3年」以上も放置された。
現行法には、テレビやラジオなどの放送広告は、投票前の14日間・2週間を除いて規制がなく、投じる資金の規制もない。資金力のある組織が大量の広告を打てば、世論が誘導されかねない。
その上、2007年に法律が作られた時は想定されなかったインターネットやSNSの利用、広告には規制がない。今やネットの市場規模はテレビを上回り、有権者の判断に大きな影響を与えるようになった。
昨年の参院選や今年2月の衆院選を見れば、インターネットやSNSの影響力の大きさは明らかだ。それだけにSNSの偽・誤情報対策は不可欠だ。
衆院選で自民党は、高市早苗総裁(首相)が出演する動画広告を大量に出し、SNSを利用する層の投票行動に大きな影響を与えたといわれる。
さらに、候補者を中傷する動画や偽情報が拡散され、大きな問題になっている。高市陣営が、野党候補を中傷する動画をSNS拡散させたという疑惑が解明されていない。
政党CMやネット広告、運動資金、そして、インターネットやSNSの利用、広告の規制のほかにも重大な欠陥がある。
まず、「最低投票率」の規定がないこと。仮に投票率が20%の低投票率でも、賛成が多ければ改憲は通る仕組みが温存されている。
次に、条文ごとの意思表明が原則になっていないこと、公務員や教員の運動を不当に制限していることだ。
高市首相は先の自民党大会で「立党から70年、時は来た。国会で議論を進めていこう」と述べ、「『改正の発議にメドが立った』と言える状態で来年の党大会を迎えたい」と改憲発議に向けた議論を急ぐよう檄を飛ばした。
国民投票法の改定は、その環境整備だが、根本的な欠陥には見向きもしないで枝葉末節の改定で改憲の準備が進んでいるような雰囲気を出そうという魂胆が見え見えだ。